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Fun Fun Talk  第1回 室伸一さん(ガラス作家)

  
私(竹中麗湖)が仕事の周辺の人たちと語らうページです。ふだん、仕事ではよく顔を合わせていても、お互いに意外と知らないことって結構あるもの。いろいろなお話しを伺わせていただきながらより理解を深め、新しい発見、新しい発想に結びつけばまた楽しみが広がります。

第1回のお相手は、上越クリスタル硝子に所属のガラス作家・室伸一さん。
2007年7月11日から24日まで、日本橋高島屋美術工芸サロンで個展を開催中の室さんを会場にたずね、お話しを伺いました。
室さんは1949年、福岡県飯塚市のお生まれです。金沢美術工芸大学で彫金を学んでいましたが、いざ就職となったときにガラス工芸の道を目指され、あまたあるガラス制作会社のなかから、「東京には住めないな」と上越クリスタル硝子に進まれました。
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まずはデッサンから

「制作はかならずデッサンから入ります。デッサンを前に職人とこれを作るんだと決めておいて取りかかります。もちろん人手がありませんので、職人と一緒になって、必然的に共同作業ですね。そのなかで、ああしたい、こうしたいと…。お互いに切磋琢磨じゃないですけど技術的に難しいことだったとしても、言ったからにはらやってみようと」

ガラスは作っている最中は流動体なので、グニャグニャと形が変わる。しかもその熱した状態で作り上げていかなければならないので、瞬時の判断も要求される。そうした厳しい現場での空気を少しも感じさせることのない室さんの作品。ふわふわと雲が浮かび、山の向こうには虹が出ていたり、川が流れていたりと物語性がある。植物の芽や妖精、山や虹などなど。我が家にも室さんの作品が飾ってあるが、たいていお客さんがみえるとその作品を巡って話に花が咲く。個展会場にも故郷・飯塚時代の友人たちが大勢お見えになるとのこと。

「自分も風景を見ながらいろんなことを考えるわけで、僕の作品を見てくれた人が、その人なりに心の中に物語がつくられれば、うれしいですね。飯塚時代の友人たちからは、山のかたちを見て「ボタ山だ」(笑)とかいわれますけど。それがまた楽しい」

室さんにはじめてお会いし、その人となりに触れたときに感じたのは、「作品とまったく同じイメージ」でした。人はものをつくるけど、ものも人をつくるというのはあるんだな、と実感したというか(笑)。つまり、すごく素朴に自分の内面を出していらっしゃる。そこには何の衒いもなければ、気取りもない。素直ということばぴったりくる。

「うちは、本家が農家なんです。温床栽培といって、自然の旬の時期と少しずらして野菜とかを出荷すると少し値がつくでしょう(笑)。その手伝いを子どもの時分からしていたので、植物の芽は小さいときからみてました。絵も得意でしたので、よく描いたりもしましたよ」

今回の個展では、その芽をモチーフにしたガラスのオブジェを買わせていただいた。誤解を恐れずに言うと、私が室さんの作品にひかれるのは、生活して行くにはなくてもよい無駄ということかもしれない。「無駄」というのはすなわち「余裕」。生活の中に余裕がなければ、魅力がなくなる。私などはその余裕を生むために努力している感じだが、室さんという人は、その余裕を自然に合わせ持っている感じがする。だから、人物も作品も、その存在が私をなごませてくれる。本当は花をいけるためのものではない室作品に、私は花を一生懸命いける。いけたくなる。それは私の世界の一部に室さんが参加しているという言い方が近いかもしれない。

「一番最初に芽の作品を作ったとき、知り合いのおばさんから、『伸ちゃんは、それで芽を作品にしようと考えたんだね』(笑)と。まあ、モチーフについてはそうした自分なりの原風景とかが関連しているのかもしれないですけど、大きな意味での制作上のテーマとしては、ご指摘のように役に立たないというか、人間が作ったこのガラスという素材の可能性をもっと広げるための世界を繰り広げていきたいと思っています。色とその透明性などの特長を生かして、立体的な絵というとおかしいですが。なにかそういうものを目指しています。ガラスの機能的な面を生かしたものは、作っている人もいますし、存在もしていますので。」

それにしても、普段は上越クリスタル硝子の社員としての仕事をこなしながら、こうした一つの世界をつくりあげた室さんは素晴らしいと感心する。誰にもない世界、誰が見ても「あ、室さんの作品だ」とわかるものを作り上げたのだから。「これしかできないから」といって照れながら謙遜するが、やはり作品を発想し発信するからにはまず自分の世界をつくりあげることが大切だと思う。それは簡単そうで、実は難しいことなのだ。

「基本的にはサラリーマンですから、毎日仕事が終わってから自分の創作をするという日々でした。でも上越の工房にはいい先輩がいて、いろいろなことを教わりましたし、作家の先生方もよくみえたので、すごく勉強になりました。
若い頃はいろんなことをやりたいから、あれもこれもと手を出したくなるんですけど、なるべく同じテーマを続けようとやってきました。でも、こうしたいと思ったことができるようになってきたのは最近ですよ。たとえば雲をここに入れたいっていっても、制作段階ではどこにどう入れたらいいかわからないですよ。それが徐々に慣れてきて、わかってくる。だからいろいろなことを職人さんたちと互いに切磋琢磨しながら、難しいことをやってみようと思うんです。」

職人さんと自分との気力、意欲とか呼吸の調和が大切な世界。厳しさもあるだろうが、きっと職人さんたちも楽しいと思う。この個展のために3カ月間休んでいないって言いいながら、この柔和な顔つきですから。そんな室さんには自然に囲まれながら創作活動を行う姿こそがよく似合う。

「そうですね。若い職人さんたちは、こんなのができるんだとうれしそうにしてくれます。作品を介してお客さんとも話がつきないこともありますし。
いま住んでいるところはなにもないですよ。目の前がケヤキの林で、キジが飛んでて……、最近はあまりしてませんけど魚釣りもしたし、山登りもしたし、キノコ採りもよくしてました。まあいまでいう、スローライフですね」

こうしてお話しを伺っているあいだにもお客さんが次々に来場し、ゆっくりと作品を巡りながらときどきほほえんだりもしている。
「ここにいるとお客さんの反応がじかに見られるでしょう。それが何よりもうれしいんです」と、笑顔の奥に暖かなまなざしをのぞかせた。 (2007.7.13日本橋高島屋にて)
(文、写真について許可を得て掲載しています)

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by t-metier | 2007-08-19 14:51 | Fun Fun Talk